中期経営計画の策定をコンサルティング会社に依頼しようと費用を調べると、50万円という情報もあれば、300万円という情報も出てきます。同じ「中期経営計画をつくる」という依頼なのに、なぜここまで金額が違うのでしょうか。

結論から言うと、金額の差は『どこまでやってもらうか』の範囲の違いです。計画書を1冊つくって納品して終わりなのか、その計画が実際に動き出すところまで伴走してもらうのか。ここを分けて考えないまま金額だけで比較すると、「立派な計画書はできたが、結局実行されずに終わった」という、中小企業でもっとも多い失敗に陥りがちです。

この記事では、中期経営計画の策定費用がどう決まるのかを整理したうえで、見積もりを取るときに必ず確認したい3つのことを解説します。

まず、契約形態別の費用感を整理する

中期経営計画の策定にかかる費用は、契約の形によって大きく変わります。おおまかな目安は次の通りです(複数の公開情報をもとにした一般的な相場感であり、実際の金額はコンサル会社・支援範囲によって変動します)。

契約形態 費用感の目安 期間・特徴
プロジェクト型(策定支援) 50万円〜300万円前後 3〜6ヶ月程度で計画を策定。範囲が「策定のみ」か「実行支援込み」かで大きく変わる
顧問契約型(継続支援) 月5万円〜数十万円 計画策定後の実行フェーズを月次で伴走。策定費用とは別に発生することが多い
時間制(スポット相談) 1時間1万円〜3万円 「自社で作った計画をレビューしてほしい」等、部分的に使う場合

注意したいのは、上の表の「プロジェクト型 50万円〜300万円」という幅が、そのままサービスの中身の幅だという点です。50万円のプランと300万円のプランは、能力の差というより、含まれる作業範囲の差であることがほとんどです。その差が具体的にどこから生まれるのかを、次の3つの決めごととして見ていきます。

決めごと1:「策定」と「実行支援」を分けて見積もる

中期経営計画の費用でもっとも見落とされやすいのが、計画をつくる費用と、計画を実行する費用は別物だということです。

多くの見積もりは「中期経営計画策定支援:一式◯◯万円」という形で提示されます。しかしこの「一式」に、計画完成後の実行フォロー(月次でのモニタリング、数値の振り返り、軌道修正の議論)が含まれているかどうかは、会社によってまったく異なります。

例えば、150万円で「中期経営計画策定一式」を契約したところ、それは3ヶ月かけて計画書を完成させるまでの費用で、完成後の実行支援は別途月額20万円の顧問契約が必要だった、というのはよくあるケースです。逆に、策定費用の中に半年分のモニタリングまで含まれている会社もあります。金額だけを横並びで比べると、この違いを見落とします。

中小企業でとくに問題になりやすいのは、計画をつくること自体が目的化してしまうことです。専任の経営企画担当がいない会社ほど、立派な計画書が納品された時点で満足してしまい、実行フェーズで放置されがちです。だからこそ、契約前に「策定」と「実行支援」を分けて見積もりを取り、自社にとってどちらにお金をかけるべきかを判断する必要があります。

チェックリスト

  • 見積もりの「一式」に、計画完成後の実行支援(モニタリング・振り返り)が含まれているか
  • 含まれている場合、それは何ヶ月分・月何回のフォローか
  • 含まれていない場合、実行支援は別途いくらかかるのか
  • 「計画書の完成」と「計画の実行開始」のどちらまでが今回の契約範囲か

決めごと2:誰が実際に手を動かすかで、費用も質も変わる

同じ「中期経営計画策定支援」でも、実際に自社を担当するのが経験豊富なパートナークラスなのか、若手コンサルタントが中心なのかで、費用も成果物の質も変わります。

大手コンサルティング会社の場合、営業や初回提案にはベテランが出てきても、実際の作業は若手チームが回すことが少なくありません。それが悪いわけではありませんが、**「誰の時間に対してお金を払っているのか」**は、費用の妥当性を判断するうえで重要な情報です。

例えば、月1回の役員会に同席するのが、自社の業界を熟知したベテランなのか、資料作成のために毎回状況を一から説明しないといけない若手なのかで、同じ費用でも得られる価値はまったく違います。少人数のコンサルティング会社であれば、提案した本人が最後まで担当することが多く、この点は比較的分かりやすいと言えます。

また、費用は「自社側がどこまで準備できるか」でも変わります。財務データや事業ごとの数値が整理されていれば、コンサル側の作業は減り、その分費用も抑えられます。逆に、資料がバラバラで一から整理が必要なら、その工数が費用に乗ります。

チェックリスト

  • 実際に自社を担当するのは誰か(提案者本人か、別のチームか)が明確になっているか
  • その担当者は、自社の業界・規模の支援経験があるか
  • 自社側で事前に準備できる資料(財務データ・事業別数値)を確認し、費用を抑える余地がないか

決めごと3:費用対効果は「計画の分厚さ」ではなく「実行された行動」で測る

中期経営計画の費用対効果を、つい「どれだけ立派な計画書ができたか」で判断してしまいがちです。しかし、100ページの分厚い計画書が、実行されずに棚にしまわれるのであれば、その費用対効果はゼロです。

本当に見るべきは、その計画をきっかけに、実際にどれだけの意思決定・行動が生まれたかです。新しい投資に踏み切れた、撤退を決断できた、社内の目線が揃った——こうした変化こそが、支払った費用に見合う成果です。

例えば、200万円かけて詳細な計画書をつくったが誰も見返さない会社と、80万円でシンプルな計画をつくり、毎月それを見ながら意思決定している会社とでは、後者の方が費用対効果は高いと言えます。金額の大小と成果は必ずしも比例しません。

だからこそ、決めごと1で触れた「実行支援まで含めるか」の判断が効いてきます。計画書の見栄えにお金をかけるより、その計画が実際に回り続ける仕組みにお金をかける方が、中小企業にとっては合理的なことが多いのです。

チェックリスト

  • 費用の判断基準を「計画書の見栄え」ではなく「実行される計画かどうか」に置いているか
  • 完成後、その計画を誰が・どのくらいの頻度で見返す想定になっているか
  • コンサルに「実行を続けられる仕組みづくり」まで期待するのか、策定までなのかを決めているか

よくある質問

Q. 中期経営計画の策定に、補助金は使えますか。

計画づくりや専門家活用を対象とした公的な支援制度が存在する場合があります。ただし、制度の対象・要件・募集時期は年度や地域によって変わるため、利用を検討する際は、必ず最新の公式情報(中小企業庁・お住まいの自治体・商工会議所など)や専門家に確認してください。この記事の相場感は、補助金を使わない場合の一般的な費用として捉えてください。

Q. コンサルに頼まず、自社だけで中期経営計画をつくることはできますか。

できます。とくに社内向け(経営陣・従業員の目線合わせ)が主目的なら、自社でつくる方が納得感が高いこともあります。コンサルの費用をかける価値があるのは、金融機関・投資家への説明責任が重い場合や、客観的な第三者の視点で事業を評価してほしい場合、あるいは策定を主導できる人材が社内にいない場合です。

Q. 費用を抑えるために、一番安い会社を選んでも大丈夫ですか。

金額だけで選ぶと、決めごと1で触れた「策定のみで実行支援が含まれない」ケースを見落とし、結局あとから追加費用がかかることがあります。比較する際は、金額をそろえるのではなく、同じ作業範囲(策定のみ/実行支援込み)で見積もりをそろえてから比べることをおすすめします。

Q. 一度つくれば、中期経営計画は何年も使えますか。

中期経営計画は通常3〜5年を対象としますが、環境変化に応じて毎年見直す(ローリング)のが一般的です。「一度つくって終わり」ではなく、毎年の見直しを前提に考えておくと、初回の策定費用だけでなく、その後の運用コストも含めて判断できます。

3つの決めごと・まとめ

決めごと 見積もりで確認すること
① 策定と実行支援を分ける 「一式」に実行フォローが含まれるか、含まれないなら別途いくらか
② 誰が手を動かすか 担当者は提案者本人か、業界経験はあるか、自社の準備で費用を抑えられるか
③ 費用対効果の測り方 「計画書の見栄え」でなく「実行される計画か」で判断しているか

中期経営計画の策定費用は、金額の幅が大きく、相場を調べても判断材料になりにくいと感じる方が多いと思います。大切なのは、金額そのものより、その費用が「計画書をつくること」に向いているのか、「計画が実行され続けること」に向いているのかを見極めることです。

私たちのような少人数のコンサルティング会社が中期経営計画に関わる意味があるとすれば、立派な計画書を納品することより、その計画が現場で実際に動き続けるところまで、代表が直接伴走できることだと考えています。

この記事の執筆者:株式会社シン

中期経営計画策定・新規事業開発支援・経営顧問を専門とする、少人数の経営コンサルティング会社。 野村総合研究所出身の代表を中心に、幅広い業界での支援実績があります。 会社概要・代表紹介 →